我が家のブロック塀で羽化した「オニヤンマ」を見ました
学区内の中学校の廃品回収のあった6月下旬の土曜日、廃品の搬出準備をしていた家内の素っ頓狂な声に誘われて裏口に出てみると、なんと写真で見るとおり、地上から約50センチメートルの高さでブロック塀にへばりつく大型のトンボの羽化した姿が目に入りました。ちょうど朝の7時頃の話です。トンボはすっかり「ヤゴ」から体を出しきっていて、自分が抜け出た殻にしがみつきながら飛ぶ準備をしていましたが、翅が濡れているせいか、両の翅を合わせたままで吹く風にまかせて左右に翅を揺らしていました。
私は、さっそくその姿を写真におさめたのですが、この状態のトンボは、体全体が黄色っぽく、胴体の横縞もぼやけた茶色でした。そこで、トンボの種類を確かめるためインターネットで種々検索を試みた結果、どうやらこのトンボは「オニヤンマ(鬼蜻蛉/馬大頭)」であることを突き止めました。
ほとんどのトンボの羽化は、天敵を避けるため、夜間、しかも9時以降に行われ、夜間観察の際に羽化しかけた「ヤゴ」に光を当てたりすると羽化を中止して水辺に戻ると聞いていましたが、2013年7月11日の「朝日町のホームページ」の記録では、羽化している最中の観察は朝方5時頃でも可能とあり、明るくなっても羽化するようです。また、夜のうちに羽化を済ませた新成虫は、夜明けとともに飛び立つわけですが、気温が低い朝は体温が上がらず、また、翅が濡れていると飛び立てないので、このようなときはせっかく羽化しても、全く抵抗ができないまま鳥類に捕食され、あるいは蟻に集られて殺されてしまうようです。
この日の朝は曇天でしたので、体温が上がらず、また、翅が濡れていたため飛び立てないようでしたので観察を中断して、用事を終えた9時半頃に再度覗いてみると、残念ながらすでにトンボの姿はなく、幅1センチメートル(足幅3センチメートル)、長さ3センチメートルほどの「ヤゴ」の殻のみブロック塀に取り残されていました。果して無事に飛び立ったのだろうか、それとも雀に見つかって捕獲されてしまったのであろうか、飛び立つ姿を見ていないのでちょっと心配になりましたが、抜け殻は奇麗な姿で残っており、どうやら無事飛翔できたものと推測したところです。
それと調べた結果では、羽化の際には頭⇒背中⇒足と反りかえりながら出てきて、途中で反動をつけて頭を持ち上げながら足で殻を捉え、最後に胴体を引き出して羽化を終えるようです。事実ブロック塀のトンボを確認した時点では全体的に頭から胸にかけて反り返っており、残された殻も出口の部分が反り返ったままの形で残っていました。更に、トンボが飛び立つときには体色が黒字に黄色い帯に変化してから飛び立つことがわかりましたので、観察し損ねた間に当初の色合いが次第に成虫本来の黒に黄色縞の色合いに変化していったものと思われます。
「ヤゴ」は普段は泥や砂の中に浅く潜って獲物を待ち伏せし、近づいた獲物に顎を伸ばして捕食し、5年という長期間を「ヤゴ」のままで過ごし、羽化までに10回ほど脱皮を繰り返すこともわかりました。
この「ヤゴ」がどこにいたのか、また、どのようにして我が家の裏口のブロック塀にやってきたのかは全く理解できません。
ブロック塀の側は雨水側溝ですが、道路を隔てた向かい側には、農業用のコンクリート水路があり、流水のない泥の堆積した島状の部分も存在しますので、多分この水路に「ヤゴ」が生息していたのではないかと想像するのです。そして、夜中にここを抜けだした「ヤゴ」は、たまたま塀の内側で鳥の眼からも逃れやすい場所で、かつ「ヤゴ」がへばりつき易い場所として我が家のブロック塀を見つけ、そこで明け方に羽化したものと勝手に推察したところです。
「オニヤンマ」とは、トンボの一種で、日本に現存するトンボの最大種で、その飛行速度はギンヤンマの最高時速100キロメートルに比肩する時速70キロメートルという驚異的なスピードだそうです。顎も強力で、人の皮膚をも食いちぎる力を持ち、オオスズメバチやシオヤアブなどの昆虫界の殺し屋をも捕食する獰猛さを発揮するとのことです。成虫はおもに6月から9月までの間に山間部を中心に活動するとあります。縄張り意識が強く、普段は気流に乗って自身のテリトリーをパトロールしているそうですが、まれに気流に乗って都市の郊外にも飛来することがあるようです。
そういえば昨年の夏に我が家の庭で「オニヤンマ」の飛翔を目撃したことが度々ありましたが、この日のオニヤンマの羽化という珍事には本当に吃驚した次第です。
2016年7月1日 |
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