母校の創立百二十周年記念行事

64回(昭和32年卒) 庄司 英樹
 
●母校の創立百二十周年記念行事
 7月1日に母校の創立 120周年記念行事が行われました。山形鶴翔同窓会では誘いあって石垣藤子さん(62回30年卒)黒田藤一さん(64回32年卒)渡部功さん(同)加賀山隆士さん(66回34年卒)佐藤邦彦さん(同)それに私の6人が参加しました。一同は盛況だった記念行事を喜びあい、関係者のご努力に感謝しながら山形に戻りました。
 記念式典で松浦孝一校長は「世界の各分野で活躍している卒業生は3万人。きょうは、在校生がその歴史と伝統を踏まえ継承発展させることを決意する日。たとえ高校時代に力を発揮出来なくとも大学、社会に出てから努力して自分の持つ能力を存分に発揮してください」と式辞を述べられました。在校生だけでなく私ども同窓生にとっても誇りと勇気を与えてくれました。
 来賓祝辞で石黒慶一同窓会会長は「母校は文武両道を目指して着実に成果を上げています。孔子が先人の思想・学問を研究するように述べた『温故知新』、学ぶことの大切さを説いた校庭に建つ鶴翔碑『不学牆面』(ふがくしょうめん)を絶えず心がけて学びましょう」と呼びかけました。
 記念講演は社団法人 日本航空宇宙工業会 技術部長 堀井茂勝氏(75回43年卒)でした。堀井氏は鞄月ナ・宇宙開発事業部、NEC東芝スペースシステム鰍ノ勤務し実験用放送衛星「ゆり(BS)」技術試験衛星シリーズ「ETSシリーズ」地球資源衛星「ERS」運輸多目的衛星「MTSAT:ひまわり」などの宇宙開発プロジェクトにかかわってこられました。
 堀井氏は2時間にわたって「宇宙開発と宇宙への夢」と題して1.宇宙とは2.宇宙開発3.日本の宇宙開発と宇宙事業4.いま世界の宇宙で起きていること5.これからの宇宙開発と宇宙への夢という内容をプロジェクターで貴重な画像の数々をスクリーンに投影して解説。
 "宇宙は 137億年前にビッグバーンで誕生した""火星には原始生物がいるかもしれない""地球は太陽から3番目の惑星で生命体が生息している。もしも太陽から10%近ければ地球は焦土、逆に10%離れていたら凍土だった""地球は小惑星の衝突やら、太陽の一生に左右される。30億年後にはアンドロメダ銀河に衝突・合体する。それらを避けるために月や別の恒星系へ避難・移住することになるだろう""日本は水資源が豊富と考えているが、地球の温暖化で世界のいろいろな場所で水資源が枯渇する。食料の60%を海外に依存しているわが国にとっては大問題、宇宙開発としてもこの温暖化防止の分野に一層貢献する必要がある"など示唆に富んだ話ばかり。世界の衛星打ち上げ個数はロシア(旧ソ連)とアメリカが約60%(日本は約8%)を占めているデータも紹介されました。最近、世界の覇権を握っていたアメリカに陰りが見え始めたといわれています。将来的に覇権がアメリカから移るとしたら、中国、インド、あるいは中東イスラム地域などの観測がなされています。中国は03年に有人宇宙飛行を成功させました。チベット問題をかかえ、四川大地震に見舞われながらも北京五輪を開催するなどさまざまな先端技術を急速に蓄積させてきています。また、地球温暖化をめぐる北海道洞爺湖サミットではG8に対して新興国の中国、インドが大きな力を発揮しました。
 こうした視点に立って堀井氏の記念講演を思い起こすと地球の温暖化・食糧問題など世界を考えるヒントが多くちりばめられていました。出来ることなら、30億年後に地球がアンドロメダ銀河に衝突・合体する時は他の恒星などに避難しないで地球最後の瞬間に立会い、目撃したいというとてつもない夢が広がりました。
 「宇宙から見れば人間は小さい存在。人間の細胞をつくるミクロン、そして原子の世界から見れば人間は宇宙にも匹敵する大きな存在。人間は存在すること自体が奇跡です。貴重な一瞬をやりがいのあることを見つけて充実して生きていきましょう」と結んだ堀井氏の講演は在校生・同窓生に大きな感銘を与えてくれました。
 祝賀会は 270人という大勢の出席者で、先輩と後輩が出会って幸せ感に浸ることが出来る集いでした。この席でソニーの女性管理職第一号の落合良さん(61回29年卒 作家・評論家 丸谷才一氏の姪)とも話をすることが出来ました。彼女はソニー時代に新製品(電磁調理器)開発プロジェクトマネージャー、ウォークマンのターゲット発売前調査、CS(顧客満足)マーケティング・顧客情報システム構築、ヒット商品・サービスの価値観分析手法「自分軸」の開発・トレンドリサーチを担当。ボランティアで作曲家三木稔を支援する「結の会」を設立。また、新しいリーダーシップ概念を創生する女性グループ「リーダーシップ 111」設立発起人、映画「ベアテの贈りもの」の製作委員会副会長を務め「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する……」憲法24条を草案したベアテさんと連絡・世話係。この映画は国内 200箇所以上で上映、欧州で話題となっています。彼女はいま日本でめざましい活躍をしている女性代表の一人です。加藤良平著「ソニーのDNAを受けついだ11人」でも紹介されています。落合さんは祝賀会の席でステージに立って、東京でも観ることの出来ない三木稔作曲オペラ「源氏物語」ハイライト・コンサートを10月7日に鶴岡で開催しますとPRしておられました。ぜひとも鑑賞したいと名刺交換するとその名刺は「美しい日本海を望む湯の浜温泉」と綺麗な横長のカラー写真が中心。裏面には日本列島の地図に「山形県鶴岡市」と大きく表示して交通アクセスと所要時間が書き入れてあります。そしてもう一枚は「明治ロマネスク建築・鶴岡カトリック教会天主堂」の写真入りの名刺。思わず「私はこの幼稚園に2年間通いました」というと「私も」とのこと。普段はお会いすることもお話しすることも出来ない方々と親しく懇談できたのは歴史ある同窓会あってのこと。
 20年前の創立 100周年記念テレビ番組「叡智の殿堂 鶴岡南高校」のDVDを視聴、酒井忠明会長は祝辞で「百周年を飛躍しよう年」と生徒がもじっていたエピソードを紹介して「これは、けだし名言です」と述べていました。今回、石黒慶一会長はJFケネディ大統領の就任演説 を引用して「国や社会が何をしてくれるかではなく、自分が国や社会に何が出来るか」を真剣に考え実行しようと呼びかけました。飛躍する母校と同窓会のために「自分は何が出来るか」その答えの一つは、こうした集いに参加することから始まるとの思いを強くした創立 120周年記念行事でした。
2008年7月11日