●真島俊夫氏作曲「鳳凰が舞う」
山形市の山形テルサで8月19日「シエナ・ウインド・オーケストラ 2008コンサート」がありました。指揮者はテレビ番組「題名のない音楽会」で司会を務めている佐渡裕氏。シエナ・ウインド・オーケストラは国内吹奏楽愛好家の先頭に立つフラッグシップオーケストラとして高い人気を誇り、2002年から佐渡裕氏を首席指揮者に迎えています。
プログラム第1部で真島俊夫作曲「鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺」が演奏されました。
真島俊夫氏(74回昭和42年卒)は去年7月1日の母校創立119周年祝賀会で、「鳳凰が舞う」が06年12月にフランス・リールで開かれた「クードヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクール」でグランプリを獲得した日本を代表する作編曲家であると紹介されるまで私は知りませんでした。
ステージに立った真島氏はグランプリの賞状をかざしながら「国際的なコンクールでは、西洋の旋律では日本人は太刀打ちできない。日本オリジナルの旋律をさがし求めて作曲した」といった趣旨のお話をしていました。
「シエナ・ウインド・オーケストラ 2008コンサート」のプログラムには
「鳳凰が舞う 〜印象、京都 石庭 金閣寺」 真島俊夫作曲
真島が愛する京都の印象を自由に音楽化したもの。中間部(竜安寺の石庭)などは、管打楽器で「静寂」「無音」を表現した究極のスコアといえる。クライマックスは伝説の火の鳥・鳳凰が金閣寺から飛び立ち、古都の上空を舞う壮大なイメージ。真島の代表作《三つのジャポニズム》(01年)のテイストをさらに凝縮・拡大させたような曲で、「日本人が、西洋の視座から自らを見つめなおす」ことに成功した傑作オリジナル曲である。富樫鉄火氏がこのように紹介しています。
音楽に疎い私ですが"鳳凰"が羽ばたきして舞い上がる壮大な世界、風鈴、鈴虫などの音、風に揺らぐ草木や竹林のざわめき、庭園で竹筒が流水を受けて石を叩き快い音を響かせる「ししおどし」、音で描いた京都をイメージすることが出来ました。
2年前に京都の舞鶴に住む友人から遊びに来るように誘われ、彼の家に一週間ほど逗留させてもらいました。大学で学部が同じ、下宿も大学裏で一緒、帰省する旅費がなくて布団を質入れ、持っていった腕時計が安物で入質を断られもした経験を持つ文字通り寝食をともにした間柄。青春時代に戻って話し込んでいたところ、彼の姪が佐渡裕氏の奥さんになっていることを知りました。佐渡裕氏が「題名のない音楽会」を務めてからは、レナード・バーンスタインの曲が番組でとりあげられると、卒業の頃に封切りになり魅せられた映画「ウエストサイド物語」を思い起こして友人とは早速メール交換しました。
「シエナ・ウインド・オーケストラ」が山形で公演することを知りました。即日完売になるプラチナチケットといわれ、これも山形の友人に確保してもらい舞鶴の友人に連絡、7月にメールが入りました。「佐渡裕氏が公演の帰りに、私の家に彼のご両親と奥さんの両親(妹夫妻)が訪ねてきました。会食した時に『山形の公演を友人が楽しみにしている』と話したところ『楽屋に私を訪ねてもらってもいいと伝えてください』と言っていました」という思いがけないメールの内容。ならばこの時期の故郷の自慢はなんと言っても「だだちゃ豆」。鶴岡市日枝で農業を営み、だだちゃ豆を栽培している従兄弟の五十嵐昇さんに(72回 昭和40年卒)に事情を伝えて40人スタッフがつまむことが出来る数量を依頼、「一番美味しいものをがんばって送るようにします」と快諾してくれました。山形公演の当日に送ってもらい茹でたばかりのだだちゃ豆を持参し、開演1時間前に面会しました。
ゲネプロを終えたばかりの佐渡裕氏に「真島俊夫氏は高校の同窓生で、去年の同窓会で作曲の苦心談を聞きました」と話すと「彼の曲は素晴らしいですよ。『鳳凰が舞う』はフランスでグランプリを獲得しています」と褒め称えていました。だだちゃ豆を差し入れると、月刊『ミセス』(文化出版局)にマエストロ佐渡裕の「クレッシェンド・ボナペティート!」(グルメ日記)を自分の文章で紹介した記事を1年間連載したグルメだけに、マネージャーに「これは普通の枝豆ではない。すごく美味しい貴重品だ。神戸の家のベランダでビールを飲みながら食べたら最高だなあ」と喜んでくれました。自宅マンションのベランダからは、神戸港が一望できるとのこと。京都に生まれ育ったマエストロは、1200年の歴史を持つ京都を音楽で表現した「鳳凰が舞う」の国際コンクール最高賞受賞を喜んでプログラムに採りいれたのでしょう。コンクールでは短縮版が演奏されたそうですが、この日はオリジナルどおり、ノーカットで全曲演奏されました。春の桜、晩秋の燃え立つ紅葉、竜安寺の石庭、そして池に映る雪の金閣寺の美しさ、その金閣寺の屋根に、いまにも天に向かって羽ばたこうとしている黄金色の"鳳凰"が舞う壮大な世界に聴衆を誘ってくれました。
第2部の佐渡裕のトークと音楽のコーナーでは「山形には美味しいものがありますね。先ほど知人がだだちゃ豆を差し入れてくれました。こんなにたくさん食べられるだろうかと思いましたが、食べ始めると美味しくてスタッフみんなで瞬く間に食べてしまいました。ビールを飲みながら味わいたかったのですが、本番前なのでビールを飲まずに食べました」と会場の笑いを誘っていました。
真島俊夫氏の曲については、7月1日の母校創立120周年記念行事に一緒に参加した渡部功さん(64回昭和32年卒)からメールをもらいました。その内容は「小生、県警や自衛隊の定期演奏会を聴きにいくのは大好きで、可能な限り聴きに行くのですが、昨年の自衛隊の定期演奏会では、鶴南第74回卒業の真島俊夫氏の「勇者達の夢」が最初に演奏されました。真島氏については、すでに7月に山形新聞記事で知っていたのですが、氏は、吹奏楽の作曲部門の国際コンクールで最高賞を受賞した人であり、鶴岡には各界で活躍している卒業生が多くという松浦校長の話はその通りだと思います」というものでした。
その後も渡部さんから「佐渡さん指揮のオーケストラー演奏は素晴らしかったことでしょう。私も聴きにいきたかったのですが、チケットを求めるのが遅すぎて駄目でした。毎週日曜日『題名のない音楽会』を視聴していますので、是非とも生演奏を聴きたかったのですが残念でした」とメールがありました。
江戸時代に京都と交流があった庄内で生まれ育った真島俊夫氏が京都のロマンを音楽の世界にして表現、マエストロ佐渡裕氏がこの曲を指揮して演奏、鶴翔同窓会の会員であることに誇りと幸せに浸った夏の夕べでした。
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