●丸谷才一氏に文化勲章

64回(昭和32年卒) 庄司 英樹
 
●丸谷才一氏に文化勲章
 文化の日を前に母校の先輩(51回卒)丸谷才一氏が2011年(平成23)の文化勲章の受章者に決まったことをメディアはそろって報じています。鶴翔同窓会の大きな喜びであり誇りです。
 丸谷氏は鶴岡市生まれ。東京大学文学部英文科卒の作家・評論家で「年の残り」で第59回芥川賞、「たった一人の反亂」で谷崎潤一郎賞、「後鳥羽院」で読売文学賞、「忠臣蔵とは何か」で野間文芸賞、「樹影譚」で川端康成賞、そして「輝く日の宮」にいたる多年の文学的業績に朝日賞、1998年(平成10)日本芸術院会員、2006年(平成18)に文化功労者と輝かしい受賞歴です。
 1985年(昭和60)にはやはり同窓会の先輩、"ドイツ語辞典"で知られたドイツ語学者でありドイツ文学者でもある相良守峯氏が文化勲章を受章されています。
 文化勲章は日本の学術・芸術・文化に偉大な貢献をした方々に贈られるもので、その制度は昭和12年に制定され受章者は2011年(平成23)現在328人。
 山形県出身者で文化勲章の受章者は6人。旧制中学・高校で複数の受賞者を出しているのは、わが鶴岡南高校だけの快挙です。よきライバルの米沢興譲館からは、"我妻民法"で知られた法律学者の我妻栄氏が文化勲章、哲学者の高橋里美氏が文化功労者に選ばれています。
 サッカーW杯で「なでしこジャパン」が世界一になった時に、丸谷才一氏の「希望は女性にあり」の言葉が浮かびました。3年前に音楽評論家の吉田秀和氏と新聞紙上の新春対談で「源氏物語 千年紀」にちなんで『希望は女性にあり』と述べていたことを思い出したのです。
 要旨は「源氏物語は日本文学の最高傑作で、間違いなく世界最初の小説」「日本の三千年前は、母親が家族の長、社会の指導者であり、女神の文化。これが源氏物語の成立の背景にある。千年もの間広く読まれるのは人類文化そのものが母権的な時代に変わろうとする兆候。日本はいま不況という空気が居座っているが、時代を変える力として『希望は女性にあり』女性の力に期待する」というものでした。
 この対談のあと「時代を変える力として女性」というキーワードで世の動きを眺めますと、前回の総選挙では女性議員が過去最多の54名誕生。山形県でも女性知事が登場、また国際スポーツでも女性の躍進が目立っています。
 わが母校の在校生も男女の比率が逆転して女子生徒が多くなったと聞いています。これからの時代を変える大きな原動力となる素晴らしい女性を輩出することを期待するものです。
 私は幸運にも母校の文化勲章受章者のお二人にお会いしてお話を伺う機会に恵まれました。「文化勲章受章者 相良守峯東大名誉教授のお土産」(04年1月28日)、「作家 丸谷才一氏に呆れられた話」(04年3月2日)として投稿しています。
 舞鶴にいる友人から「祝 丸谷才一氏 文化勲章受章」とメールが届きました。その内容は「今日のニュースで、貴君の高校の先輩である丸谷才一氏が文化勲章を受章されることを知りました。そこで、以前、同窓会の投稿欄に丸谷氏に取材で会ったことを書いていたのを思い出し、先ほど、読んでみました。若き日の失敗を告白した文章に、思わず、噴出しそうになりましたが、大先輩の前の貴君の緊張した姿が想像され、ほほえましくもありました」というものでした。
 鶴翔同窓会 会員でよかったと実感させられた丸谷才一氏の文化勲章受章でした。
  
2011年10月26日