テンポ116の楽曲を聴く効果

64回(昭和32年卒) 渡部  功
 
テンポ116の楽曲を聴く効果
 私は楽器の演奏はからきしだめですが、吹奏楽の演奏を聴くことは大好きで、なかでも行進曲のファンで、必ず行進曲が演奏される陸上自衛隊や警察音楽隊の定期演奏会には極力出かけるようにしています。そんなおり、今から4年前の2007(平成19)年11月10日、山形県民会館で開催された「第32回陸上自衛隊第6師団定期演奏会」において、校友・真島俊夫さん(74回・昭和42年卒)の作品・「勇者たちの夢」が演奏されました。この曲の主題は、全て「消灯ラッパ」の音階、音型をもとにしたもので、その主題が様々な形に展開され、途中はっきりとした「消灯ラッパ」も遠くから聞こえ、勇気と安らぎを感じさせる演奏でした。
 真島さんについては、その年の7月の山形新聞記事で、2006(平成18)年にフランスで開催されたク―ドヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールで、応募作品の「鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺〜」が世界各国の作曲家による 214の応募作品の頂点に立ったことを知っていたのですが、その後、真島さんが数々の作品を発表していることを知り、「鳳凰が舞う」、「五月の風」、「三つのジャポニズム」、「パリの幻影」、2003(平成15)年に山形県で開催された「国民文化祭・やまがた2003」の吹奏楽の祭典創作曲である「大いなる流れ」などの作品が収録されているCDを求め、机に向かっているときや長時間車を運転するときなどによく聴いております。
 CDへの寄せ書きによりますと、真島さんの作曲家としての始まりは中学時代にミ二チュア・スコアから自分達のバンド用に楽譜起こしを行ったことだそうで、吹奏楽との関わりが決定的になったのは、36歳の時に応募した「波の見える風景」が全日本吹奏楽コンクールの課題曲に入選した時だそうです。
 なお、「鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺〜」は、2008(平成20)年8月19日、山形テルサにおいて開催された「シェナ・ウインド・オーケストラ2008コンサート」の演奏会において、佐渡 裕指揮により披露され、このことについては、2008(平成20)年9月1日付で同期の庄司英樹さんが『真島俊夫氏作曲「鳳凰が舞う」』と題して投稿をしていますので、御記憶の方も多いことと思います。
 ところで、楽曲の演奏速度のことを「テンポ」といいますが、テンポ 116のリズムの音楽を聴くと、このリズムと脳波とが共鳴し、脳波の中のα2波の出現を多くし、集中力、思考力、運動能力を高めることが実験的に判明しているそうです。テンポ 116というのは、1分間に 116拍のリズムを刻むということで、行進曲等に代表される独特なリズムのことをいいます。つまり、行進曲の「テンポ 116」の楽曲を聴くと脳波(脳の神経細胞から出る電流の変化を記録した波形で、α、β、θ、δがあります。)の内のα波が強く発生し、より精神的に落ち着き集中力を高めることが医学的実験で証明されたのです。
 周波数帯域8〜13ヘルツ(1秒間にN回の振動をNヘルツと言います。)の脳波をα波といい、このうち8〜10ヘルツをα1波、10〜13ヘルツの脳波をα2波と呼びます。一般的にα波はリラックス状態を起こす脳波ですが、α1波はゆっくりと寛いだ状態になり、α2波は集中力が高く、頭がすっきりとなって思考明瞭な状態を起こすそうです。人間は、主に目覚めているとき五感(視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚)の働きで、意識は緊張の連続状態にあります。つまり、β波の状態にあることが多いのです。ところが心身共に極めてリラックスした状態になると、脳波はβ波からα波へとかわって行くのです。特に、「テンポ 116」の楽曲を聴くとα2波が強く発生するそうですから、テンポ 116の楽曲を聴きながら行動を起こせば、集中力、ひらめき、運動効果、精神的安定性などあらゆる面で効果が上がる可能性があると考えられるのです。このように聞いていましたので、私は車で遠出の際は、「行進曲・星条旗よ永遠なれ」、「行進曲・旧友」、「行進曲・双頭の鷲の旗の下に」など18曲を収録したCDを聴きながら運転をすることにしています。お陰さまで今日まで事故を起こすこともなく来ております。
 最近、インターネットで調べたところ、磯子中央脳神経外科病院の健康管理センター長の土田 隆医学博士が、テンポ116を中心に110~120のテンポを刻むマーチをシチュエーションに合わせて選曲区分し、これに基づいたCDが販売されていることを知りましたので、参考までにこれを次に掲げておきます。
>区      分 楽     曲     名
仕事効率を高める楽曲 ボギー大佐、忠誠、雷神、エル・カピタン、アメリカン・パトロール、サーカスの蜂、ロレーヌ行進曲、剣士の入場、ガナルカナル行進曲、軍隊行進曲、山賊のガロップ、トルコ行進曲、行進曲威風堂々、第一番、タンホイザー「大行進曲」、ラデッキー行進曲
思考力・記憶力を高める楽曲 ワシントン・ポスト、旧友、自由の鐘、士官候補生、ローリング・サンダー、ブラウーラ、戴冠式行進曲、祝典行進曲、剣と槍、国民の象微、勇者の後裔、史上最大の作戦のマーチ、おもちゃの行進曲、カレリア行進曲
運動能力を高める楽曲 双頭の鷲の旗の下に、ジョージアを越えて、サンブル・エ・ムーズ連隊行進曲、キング・コットン、星条旗よ永遠なれ、銃声、勝利の父、勝利の旗の下に、錨をあげて、ネルソン子爵、のトロンボーン、ダム・バスターズ、鞭と拍車、凱旋行進曲、常勤曲
 なお、行進曲は歩足を揃えて行進するために演奏される楽曲、ないし、行進を描写した楽曲で、「マーチ」とも呼ばれます。その歴史をフリー百科事典 「Wikipedia」で調べてみると、『行進のための楽曲は古くからあり、軍隊や儀式などで使われてきたようだ。17世紀の終わりごろ、トルコの軍楽隊が中央ヨーロッパに来て、当時のヨーロッパ人に強烈な印象を与えたが、この軍楽隊は、管楽器と太鼓とシンバルとから成り、舞いながら行進した。当時のトルコの軍隊が強かったこともあって、これがヨーロッパに流行して、摸した作品が数多く書かれた。「トルコ行進曲」と称され、合奏ならば大太鼓、シンバル、トライアングルを必ず用いた。また、それらの楽器を含む音楽が「トルコ風」として、モーツァルトの歌劇「後宮からの誘惑」序曲のようにトルコそのものを表すものとして使われたこともある。』と書いてありました。

 (注)この文は、『山形県立博物館・友の会会報第1号(通巻12号)』(山形県立博物館友の会、2011年6月30日発行、)へ「テンポ 116の楽曲を聴く効果」と題して投稿したものに加筆し、再編集したものです。

2011年11月11日